【2022年4月】中小企業でも義務化されるパワハラ防止法。対応策を徹底解説!

【2022年4月】中小企業でも義務化されるパワハラ防止法。対応策を徹底解説!

2020年6月1日から大企業の義務となっていたパワーハラスメント防止法が、2022年3月31日までの努力義務期間を設けたうえで、2022年4月1日から中小企業でも義務化されます。そこで今回は義務化される内容と人事労務担当者が4月1日までに準備しておく必要があることをご紹介いたします。

今回の法改正で義務化されること

2022年4月に中小企業でも義務化されるパワハラ防止法の内容について、まずは中小企業の定義とともに詳しくみていきます。

中小企業とは具体的にどれくらいの規模をさすのか

中小企業の範囲は、次のように業種によってしっかり区分されています。

【中小企業の定義】

①②どちらかにあてはまる場合は中小企業
資本金の額または出資の総額常時使用する労働者数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業(サービス業、医療・福祉等)5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種(製造業、建設業、運輸業等上記以外全て)3億円以下300人以下


2022年4月1日からの義務化に伴い措置すべきこと

【企業が実施すべき措置】

(1)会社の方針決定とその周知や啓発
次の内容を決定し、労働者への周知を行う。
・職場におけるパワーハラスメントの内容
・パワーハラスメントをしてはならない旨の方針
・行為者へ厳正な対処をする旨と対処の内容(※就業規則等の文書へ規定要)

(2)パワーハラスメントについて対応する窓口の設置
パワーハラスメントについて対応する窓口を設置して労働者へ周知するほか、窓口の担当者が適切に対応できるよう研修を行う。

(3)パワーハラスメントが発生した際には迅速で適切な対応を行う
まず事実関係を迅速かつ正確に把握し、事実確認ができた場合には、すぐに被害者へ配慮した措置と行為者への措置を適正に行う。
また、事実確認ができなかった場合も含めて、今後の再発防止対策を講じる。

(4)その他の実施すべき措置
相談者や行為者などのプライバシーを保護するための措置を講じて、労働者へ周知するほか、相談したことなどを理由として不利益な取扱いをしない旨を定めて、労働者へ周知や啓発を行う。

知っておきたいパワーハラスメントとされる3つの条件

どこからパワーハラスメントにあたるのかについては、次の3つの条件が定められており、これらすべてに当てはまる場合にパワーハラスメントとなります。

ただしこの判断については、相談者と行為者の両方から丁寧な事実確認を行ったうえで、さらにさまざまな要素も考慮して、総合的に判断する必要があります。

【パワーハラスメントにあたる3つの条件】

(1)言動の背景に優越的な関係性がある
→上司から部下への言動、抵抗が困難な集団での言動、業務を円滑に行うために協力が必要な同僚や部下からの言動など。

(2)業務上必要な範囲を超えた言動
→社会通念上、明らかにその言動が業務上必要なく、またその方法が妥当ではない場合。

(3)労働者の就業環境に悪い影響を与える
→身体的または精神的な苦痛を与えられたことにより、被害者が働く上で十分な能力を発揮できなかったり、見過ごせないほどの支障が生じたりした場合。
※この判断は、社会一般の他の労働者も同じように感じるかを基準とする。

パワーハラスメントの具体的な例

パワーハラスメントとなる条件をふまえて、具体的にどのような行為がパワーハラスメントに該当するのかを解説します。

ただしこの具体例は、優越的な関係が背景にあるものを前提としていて、さらにこの背景がない場合でも、個々のさまざまな状況ふまえて判断する必要があります。

【パワーハラスメントの具体例】

言動の種類パワハラに該当する例パワハラに該当しない例
身体的な攻撃・相手を殴る、蹴る
・物を投げつける
・誤ってぶつかる
精神的な攻撃・人格を否定する
・必要以上に厳しく叱る
・他の人の前で、大声かつ威圧的に繰り返し叱る
・能力を否定し罵倒するようなメールなどを、当人を含めた複数人に送る
・何度注意しても、遅刻などの社会的ルールを守れない場合に一定程度強く注意する
・会社の業務内容や性質からみて重大な問題行動があった場合に、一定程度強く注意する
人間関係からの切り離し・自分の意に沿わない場合に仕事を外したり、長期間別室で隔離したり自宅研修をさせる
・1人に対し集団で無視をして、職場内で孤立させる
・新規採用した場合に、別室で短期集中的に研修などを行う
・懲戒規定に基づき処分を受けた者を、一時的に別室で研修させる
過大な要求・長期間にわたり肉体的苦痛を伴う過酷な環境下で、勤務に直接関係しない作業をさせる
・新卒採用者に対して必要な教育を行わず、達成不可能な目標を課した上に、達成できなかったことを厳しく叱る
・業務に関係ない私的な雑用を強制的にさせる
・成長を促すために現状よりも少しレベルの高い業務をさせる
・繁忙期のため、通常よりも一定程度多い量の業務をさせる
過小な要求・管理職であるものを退職させるために、誰でもできる業務をさせる
・気にいらないという理由で、嫌がらせのために仕事を与えない
・能力に応じて、業務の内容や業務の量を一定程度減らす
プライバシーの侵害・職場外でも継続的に監視したり、私物の写真を撮ったりする
・個々の性的指向や性自認、病歴、不妊治療などの機微な個人情報を、本人の了解なしに他人へ暴露する
・労働者への配慮を目的として、家族の状況などをヒアリングする
・本人の了解を得た上で、機微な個人情報(左記)を必要な範囲で人事労務担当者へ伝え、配慮を促す

まとめ

2022年4月1日から中小企業でも義務化されるパワハラ防止法については、まず人事労務担当者がパワーハラスメントの範囲などついて、正しい知識を身につけ、その上で会社の方針や規則を定め、就業規則等の文書へ規定した上で、労働者へも周知や啓発を行う必要があります。

また、実際に相談があった場合に迅速かつ適切に対応できるよう、窓口の担当者は事前に研修を受けたり、マニュアルを作成したりしておくと良いでしょう。